建設現場で外国人材と一緒に働いていると、「さっき説明したのに、違う作業をしている」「“わかりました”と言ったのに伝わっていなかった」
「何度説明しても同じところで間違える」と感じることがあります。
その結果、教える側の職長や先輩社員が疲れてしまい、「結局、日本語の問題ではないか」と考えてしまうこともあるでしょう。
しかし、外国人材への指示が伝わらない原因は、日本語能力だけとは限りません。
建設現場特有の専門用語や省略した言い方、指示の出し方、理解できているかの確認方法など、会社側の伝え方を少し変えるだけで改善できるケースもあります。
JAC(一般社団法人 建設技能人材機構)が2026年に公表した特定技能外国人の受入企業への調査では、コミュニケーションで困ったこととして「指示の伝わり方」52%、「言葉の壁」50%、「専門用語の理解」41%という結果が示されています。
建設業の外国人コミュニケーションは、外国人本人だけではなく、受け入れる建設会社側にとっても大きな課題の一つです。
この記事では、入管業務・人材業界・建設現場での経験を踏まえ、外国人材に現場の指示が伝わりにくい原因と、建設会社が取り組める改善方法を解説します。
建設業で外国人に指示が伝わりにくい4つの理由
外国人材とのコミュニケーションで問題が起きたとき、最初に「日本語能力が足りない」と考えがちです。
もちろん日本語能力も重要ですが、それだけで説明できない場合があります。
1.建設現場では省略した指示が多い
経験のある日本人同士であれば、「これ、向こうに持っていって」「そこ先やっといて」「いつもの感じで納めて」といった短い指示でも、前後の状況から意味を理解できます。
しかし、外国人材にとっては、「これ」が何なのか「向こう」がどこなのか「いつもの感じ」が何なのかが分からないことがあります。
日本人同士では伝わる指示でも、外国人材には必要な情報が不足している可能性があります。
2.建設現場特有の言葉が多い
建設現場では、日常生活ではほとんど使わない専門用語や現場独特の言い方が数多くあります。
さらに、会社や職人によって同じ物を違う呼び方で呼ぶケースもあります。
日常会話がある程度できる外国人材でも、現場で使われる言葉まで最初から理解できるとは限りません。
「日本語で会話できる=現場の指示をすべて理解できる」とは考えない方がよいでしょう。
3.「わかりました」で確認を終えてしまう
外国人材に、「分かった?」と聞いたときに、「はい、分かりました」と返事が返ってくることがあります。
しかし、その返事だけで内容を理解できているとは限りません。
分からないと言いづらい、何度も質問すると怒られると思っている、説明の一部分だけ理解している、といった可能性もあります。
JACの受入企業調査でも、「わかりました」と返事をしていても実際には理解できていないという声が報告されています。
重要なのは、「分かったか」を聞くことではなく、何を理解したのかを確認することです。
4.教える人によって指示が違う
ある職長は「こうしろ」と言い、別の先輩は違う方法を教える。これは日本人の新人でも混乱します。
外国人材の場合、日本語の理解に加えて、どちらの指示に従えばよいのかまで判断しなければなりません。
外国人本人の能力だけではなく、会社側の教育方法が統一されているかも確認する必要があります。
指示が伝わらない状態を放置するとどうなるのか
コミュニケーションの問題は、単に「仕事を教えるのに時間がかかる」という問題だけではありません。
建設現場では、指示の認識違いが手戻りや施工ミスにつながる可能性があります。
さらに、安全に関する指示が正しく伝わらなければ、事故につながる危険性もあります。
国土交通省が公表している外国人建設技術者向けの資料でも、日本語教育・コミュニケーションを「安全確保、指示理解、コミュニケーションの成立」の基盤として位置付けています。
そしてもう一つ見落とされやすいのが、教える側の負担です。
何度説明しても伝わらない状態が続けば、「自分でやった方が早い」「外国人を教えるのは大変だ」「もう面倒を見られない」と職長や先輩社員が感じるようになります。
外国人材だけを見るのではなく、日本人側の負担も含めて考えることが重要です。
外国人材への現場指示を改善する7つの方法
ここからは、建設会社が実際に取り組みやすい方法を紹介します。
1.一度に一つの指示を出す
長い説明を一度に行うのではなく、一つずつ区切って伝えます。
例えば、「これ運んで、そのあと向こう片付けて、終わったら材料取ってきて」ではなく、「まず、この材料をAの場所まで運んでください」と伝えます。その作業が終わってから次の指示を出します。
日本語能力が高くない段階では、情報量を減らすだけでも理解しやすくなります。
2.「何を・どこで・いつまでに」を明確にする
「あれやっといて」ではなく、何をするのか、どこでするのか、いつまでにするのかを具体的にします。
例えば、「この材料を、3階の作業場所まで、10時までに運んでください」という形です。
国土交通省の外国人建設技術者向け資料でも、
指示を理解するための基本構造として「何を/どこで/いつまでに」を明確にする方法が紹介されています。
3.「分かった?」ではなく、本人に説明してもらう
指示を出したあと、「分かった?」ではなく、「今から何をしますか?」と聞いてみます。
外国人材本人の言葉で説明してもらえば、どこまで理解できているのか確認できます。
間違って理解している場合も、作業を始める前に修正できます。これは安全面でも非常に重要です。
4.写真・実物・動作を使う
言葉だけで伝えることにこだわる必要はありません。
完成状態の写真を見せる。実物を指さす。実際に一度やって見せる。OK例とNG例を並べる。
こうした方法を組み合わせることで、言葉だけでは伝わりにくい作業も理解しやすくなります。
厚生労働省も、外国人従業員とのコミュニケーションにおいて、資料・写真・図・実物などを活用する方法を紹介しています。
5.OKとNGを明確にする
建設現場では、「もうちょっと」「いい感じに」「だいたいこれくらい」といった感覚的な表現が使われることがあります。
経験を積んだ職人同士なら理解できますが、新しく入った外国人材には判断基準が分からないことがあります。
良い状態と悪い状態を具体的に見せ、「ここまではOK」「これはNG」と基準を明確にしましょう。
外国人材だけではなく、日本人の新人教育にも有効です。
6.現場で頻繁に使う言葉を統一する
最初から大量の専門用語を覚えてもらう必要はありません。
まずは、
安全に関する言葉
毎日使う工具や材料
頻繁に行う作業
報告・連絡・相談で使う言葉
など、使用頻度の高い言葉から整理します。
会社の中で呼び方をできるだけ統一し、写真と名称をセットにした簡単な一覧を作るのも効果的です。
「人によって呼び方が違う」という状態を減らすことが、外国人材だけでなく会社全体の教育を分かりやすくします。
7.外国人材だけの問題にしない
最も重要なのはここです。
指示が伝わらないとき、「もっと日本語を勉強してほしい」だけで終わらせないことです。
もちろん外国人材自身が日本語や仕事を覚える努力は必要です。
一方で、会社側も、
指示は分かりやすいか?
教える人によって内容が違わないか質問しやすい雰囲気になっているか?
困ったときの相談先が決まっているか?
を確認する必要があります。
外国人材と日本人社員の双方が少しずつ歩み寄ることで、現場の負担を減らしていくことができます。
「やさしい日本語」は甘やかすことではない
外国人材に分かりやすく話すというと、「そこまで外国人に合わせる必要があるのか」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、「やさしい日本語」はルールを緩くしたり、仕事の基準を下げたりすることではありません。
伝える内容は変えず、伝え方を分かりやすくするものです。
例えば、「作業終了後、速やかに資材を所定の位置へ戻してください」より、「仕事が終わったら、この材料をここに戻してください」の方が理解しやすくなります。
厚生労働省も、外国人従業員と働く日本人向けに、短く、はっきり伝えることなどを含むコミュニケーション方法を紹介しています。
安全や品質の基準を守ってもらうためにも、正確に伝わる言葉を使うことが重要です。
外国人材とのコミュニケーション改善は、日本人の働きやすさにもつながる
外国人材への指示方法を整理すると、
誰が教えるのか?
どのように教えるのか?
何を理解できれば次の仕事へ進むのか?
困ったときに誰へ相談するのか?
といった、これまで曖昧だった教育方法が見えるようになります。
これは外国人材だけのためではありません。
新しく入った日本人社員や若手職人を育てる際にも役立ちます。
外国人材を受け入れたことをきっかけに、
会社全体の教育やコミュニケーションを見直すことができれば、現場で教える側の負担も減らせる可能性があります。
まとめ|「日本語の問題」で終わらせず、伝わる仕組みをつくる
建設現場で外国人材に指示が伝わらない場合、
原因を本人の日本語能力だけに求めるのではなく、会社側の伝え方や教育体制も確認することが大切です。
一度に一つずつ指示する。
「何を・どこで・いつまでに」を明確にする。
本人に説明してもらい理解度を確認する。
写真や実物を使う。
OK・NGを明確にする。
現場用語を整理する。
こうした小さな改善を積み重ねることで、外国人材とのすれ違いを減らすことができます。
そして、外国人材だけではなく、職長や日本人社員が無理なく一緒に働ける状態をつくることが重要です。
Rensiaでは、外国人材を雇用する建設会社に対し、
会社・職長・外国人材それぞれの状況を確認し、現場の伝え方、相談ルート、面談、育成方法などを整理する支援を行っています。
「外国人に何度説明しても指示が伝わらない」
「職長が外国人対応を一人で抱えている」
「外国人を増やしたいが、今の教育方法で大丈夫か不安」
といった課題がある場合は、問題が大きくなる前に現在の受入れ体制を一度整理してみることをおすすめします。
Rensiaでは初回相談を無料で受け付けています。


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