外国人材を採用したあと、「現場に入れば仕事は覚えるだろう」「とりあえず職長についてもらえば大丈夫」と考えていないでしょうか。
建設業では、仕事を現場で覚えること自体は珍しくありません。
日本人の新人も、先輩職人の仕事を見ながら経験を積み、少しずつできる仕事を増やしていきます。
しかし、外国人材の場合は、仕事そのものを覚えることに加えて、
日本語、建設現場独特の言葉、日本の仕事の進め方、安全に対する考え方など、同時に覚えなければならないことが数多くあります。
その教育を一人の職長や先輩職人だけに任せてしまうと、教える人の負担が大きくなるだけでなく、外国人材の成長にもばらつきが生まれます。
この記事では、建設会社が外国人材を育成するときに考えたい「教育の仕組み化」について、現場目線で解説します。
〜建設業の外国人教育で起こりやすい「職長任せ」〜
外国人材が現場へ配属されると、多くの場合、実際に仕事を教えるのは職長や先輩職人です。
これは決して悪いことではありません。
現場の仕事を最も理解している人が直接教えることには、大きなメリットがあります。
問題なのは、「教育する人は職長。でも会社として教育方法は決めていない」という状態です。
何を最初に教えるのか。
どこまでできれば次の仕事を教えるのか。
分からないことがあったとき誰に相談するのか。
仕事を覚えているかを誰が確認するのか。
こうしたことが決まっていないと、教育方法が職長個人の経験や考え方に依存します。
Aさんは丁寧に一つずつ教える。
Bさんは「見て覚えて」と教える。
Cさんは細かく説明する。
Dさんは忙しくてほとんど教えられない。
同じ会社でも、配属された現場や教える人によって成長速度が大きく変わってしまいます。
〜外国人への仕事の教え方は、多くの建設会社が抱える課題〜
JAC(一般社団法人 建設技能人材機構)が2026年に実施した、特定技能外国人を受け入れている建設会社356社への調査では、仕事を教える上で大変だったこととして「言葉の壁」が72%と最も多く、「安全衛生の指導」が37%、「仕事の習慣」が24%と続いています。
また、受入れ後に直面した課題では「日本語能力不足」が71%となり、「業務習得の遅れ」も挙げられています。
これは単純に、「外国人の能力が低い」という話ではありません。
教える側と教わる側の間に、日本語、経験、文化、仕事の常識など複数の違いがあるため、日本人の新人と全く同じ教え方では伝わりにくい場面があります。
※現場で外国人材に指示が伝わりにくい原因については、こちらの記事で詳しく解説しています。
だからこそ、会社として教育方法をある程度整理しておく必要があります。
1.入社直後に「何を覚えるのか」を明確にする
最初から何でもできるようになってもらおうとすると、教える側も教わる側も混乱します。
まず、「最初の1か月でここまで」「次の段階ではここまで」というように、習得する仕事を段階的に考えます。
例えば最初は、安全ルール、道具や材料の名前、基本的な作業、報告方法を重点的に覚えてもらう。
その後、慣れてきたら一人で任せる作業を増やしていく。
こうして順番を決めるだけでも、教える側は「次に何を教えるべきか」が分かりやすくなります。
外国人材本人にとっても、自分が何を覚えればよいのかが明確になります。
2.「できる・まだできない」を見えるようにする
教育が感覚だけになると、「だいぶ仕事を覚えてきた」「まだ全然できない」という曖昧な評価になりがちです。
そこで、作業ごとに習得状況を簡単に記録します。
例えば、「説明を受けながらできる」「一人でできる」「他の人に教えられる」といった段階を決めておけば、成長が見えやすくなります。
これは外国人材を評価するためだけのものではありません。
職長が交代した場合でも、「この人はどこまで仕事を覚えているのか」を次の人へ伝えやすくなります。
教育を職長一人の頭の中だけに残さないことが重要です。
3.教える言葉をできるだけ統一する
建設現場では、同じ工具や作業でも人によって呼び方が違うことがあります。
日本人の経験者であれば意味を推測できますが、外国人材にとっては別の言葉として認識される可能性があります。
Aさんから教わった言葉と、Bさんから言われた言葉が違えば、「昨日覚えたものとは別のものなのか」と混乱することもあります。
会社や現場で頻繁に使う工具、材料、作業、安全に関する言葉だけでも、呼び方をある程度統一しておくと教育しやすくなります。
写真と名称を組み合わせた簡単な資料を作っておくのも有効です。
4.言葉だけではなく「見せて教える」
作業を長い日本語で説明するより、一度実際にやって見せた方が早く理解できることがあります。
特に建設業は、実物を使って教えられる仕事が多い業界です。
まず職人がやって見せる。
次に外国人材本人にやってもらう。
間違っている部分だけ修正する。
そして、もう一度本人にやってもらう。
こうした流れにすると、「説明したから終わり」ではなく、実際にできるかまで確認できます。
JACの調査でも、翻訳アプリだけに頼らず、作業については実演を重視している受入企業が紹介されています。
5.安全教育は「説明した」ではなく「理解した」まで確認する
建設現場では、教育の中でも安全に関する内容は特に重要です。
厚生労働省は、外国人労働者への安全衛生教育について、本人が内容を理解できる方法で実施する必要があるとしています。
外国語教材、写真、イラストなど、外国人労働者が理解できる方法を活用することも案内されています。
つまり、「日本語で説明した」だけでは十分とは限りません。
本人に、「ここでは何が危険ですか?」「この作業をするとき、何を確認しますか?」と聞き返し、理解できているか確認することが重要です。
安全教育については、多少時間がかかっても「本当に理解できているか」まで確認する方が結果的に会社と職人を守ることにつながります。
6.仕事を教える人と相談する人を分けて考える
ここは見落とされやすいポイントです。
仕事を教えてくれている職長に、「仕事が分からない」とは言えても、「職長との関係で悩んでいる」とは相談できません。
給与、人間関係、生活、仕事への不安などについても、毎日直接指導している人には言いにくい場合があります。
そのため、「仕事を教える人」と「困ったときに相談できる人」を必ずしも同じ人にする必要はありません。
実際、JACの受入企業調査でも、相談役を固定したり、複数の役員で支援したりする企業の事例が紹介されています。
相談先を明確にしておけば、小さな不満や不安を早い段階で把握できる可能性があります。
7.教える側の職長も支える
外国人材の教育というと、「外国人をどう育てるか」だけに注目しがちです。
しかし、実際に負担を抱えるのは、毎日現場で教えている職長や先輩職人です。
自分の仕事をしながら新人へ説明する。
伝わらなければもう一度説明する。
間違えれば修正する。
安全面にも気を配る。
これが続けば、「外国人を教えるのは大変だ」「自分でやった方が早い」と感じても不思議ではありません。
そこで会社側は、「外国人にもっと頑張ってもらう」だけでなく、「どうすれば教える人の負担を減らせるか」という視点を持つ必要があります。
教育手順を決める。
写真付き資料を作る。
相談先を決める。
定期的に習得状況を確認する。
こうした仕組みを会社側で用意することは、外国人材のためだけではありません。
職長を守るための仕組みでもあります。
〜外国人教育を仕組み化すると、日本人の新人教育にも使える〜
外国人材の受入れをきっかけに教育方法を整理すると、「今まで日本人にも感覚で教えていた」ということに気づくケースがあります。
何を覚えるべきなのか。
どこまでできれば一人前なのか。
誰に相談すればいいのか。
仕事の基準は何なのか。
これらが明確になれば、外国人材だけではなく、新しく入った日本人社員や若手職人の教育にも活用できます。
つまり、外国人材の教育体制を整えることは、
会社全体の新人教育を見直すきっかけにもなります。
※外国人材が長く働ける会社づくりについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
〜まとめ|外国人を育てるのではなく「育つ仕組み」をつくる〜
外国人材の教育を、現場の職長一人に任せ続けるには限界があります。
職長の能力が高くても、忙しい現場の中で仕事と教育をすべて抱えるのは大きな負担です。
大切なのは、「良い職長を探すこと」だけではありません。
誰が担当しても一定の教育ができるよう、教育する内容、仕事の習得状況、現場で使う言葉、相談先などを会社として整理することです。
外国人材が育ちやすくなり、職長の負担も減る。
その両方を目指すことが、長く一緒に働ける現場づくりにつながります。
Rensia(レンシア)では、外国人材を雇用する建設会社向けに、外国人本人だけではなく、現場で一緒に働く職長・職人の負担にも目を向けながら、教育方法、相談ルート、面談、育成方法などの受入れ体制を整理する支援を行っています。
※Rensiaの具体的な支援内容はこちらをご覧ください。
「外国人の教育を職長に任せきりになっている」
「教える人によって内容が違う」
「外国人が成長しているのか分からない」
「職長の負担が大きくなっている」
そんな状態がある場合は、一度、現在の教育方法を整理してみることをおすすめします。

